毎年、小学校が始まる4月・5月になると憂鬱になる保護者がいる。これは、クラスを担任する教師も同様だ。その理由はPTAの役員決め(人選)が難航するためだ。
ある学校では、授業参観の後に行われるPTA役員決定会議に、1クラス35人のうち会議に残った保護者は、たった7名だったという。
一方で、次々に立候補者があり、PTAの役員決めに苦労をしない学校もあるという。
PTA役員決めに効果があったポイント制導入と、参加型PTAを支えるサポーター性を導入した実例を、NHK Eテレの番組「エデュカチオ!」で尾木ママと東山が語り合った。
意外に多忙なPTA活動
引き受けたはいいが、資料の作成や出席しなければならない会議が多く、予想以上に大変だったという意見が多い。
下は、PTA広報委員会役員を引き受けた、浜田さんの一週間スケジュール。
実際に行ったPTA活動
そもそもPTAとは?
PTAとは、“Parent-Teacher Association”の頭文字をとった略語である。文字通り、保護者と教職員組織する団体で、基本的に両者は対等の立場にある。
1897年、アメリカでハースト夫人らの母親たちが中心となって発足した。日本で導入されたのは、第二次世界大戦後にGHQによってもたらされた。
親と教師が対等の立場にたって、トップダウン形式の教育現場に歯止めをかけ、軍国主義教育を再びはびこらせない、民主化を確立するのが目的。
行事PTA・下請けPTA
学校で行う年間行事をこなすための組織として行事PTAと揶揄され、便利に使われている実態もあるという。
また、運動会では、人手が足りない教師にかわって、自転車整理などを学校側から要求される下請けPTAと言われている学校があるという。
保護者がドンドン立候補するポイント制
ここまで見たように、負担ばかりが多くのしかかって、メリットを感じられないPTA役員に、ドンドン立候補する小学校があるという。岐阜市の則武小学校がそれだ。
以前は、他校と同様、PTAの役員をやりたがる人は少なかったという。しかし、19年前にPTA役員にポイント制を導入したところ、立候補者がドンドン現れる変化が出たという。
ポイント制導入の狙い
則武小学校PTAの場合、委員・副委員長・委員長・PTA会長とそれぞれの役職ごとに毎年ポイントが付与される。そして、ポイントが4点以上に達した場合、次年度以降のPTA役員選出は免除されるという。
この免除要件は、子供が複数人いる場合にも適用され、例えば一度PTA会長を務めると、子供が何人いようと、それ以降は立候補を除いて役員に選抜される恐れはなくなるという。
子供が複数いて、将来に渡って学校に係る場合、計画的に参加することができる。
選択権が自分(保護者)にあるのが、すごくいい。
注意しなくてはならない、ポイント制で割を食う保護者も!
エデュカチオ!番組内では、PTAのポイント制度バンザイ!という論調だった。しかし、ポイント制で見落としがちな注意をしなければいけないところがあるという。これは、このブログの読者にメールでお教えいただいて初めて気づいた。
高学年になってから、転入(転校)してきた場合。これは、実際に経験したことだと仰っていた。
転校前の学校でPTA活動に参加していたが、転勤によって新しい学校に転入すると当然、前校で蓄えてきたポイントはゼロになる。
PTA役員が決まらず、「◯◯さんはポイントがないから・・・。」と言われて泣く泣く役員を務めることになったという。
こんなケースもあるということだけは、覚えておいたほうが良いと思う。
PTAのやりたい行事を支えるサポーター制度
東京都大田区立嶺町小学校の事例が興味深い。
この学校では、PTAが主体となって、子どもたちとやりたい行事やイベントの意見がドンドン生まれるという。
PTAで生まれた「やりたい行事」を手伝ってくれるサポーターを都度、保護者から募集する。
サポーターが集まらない行事やイベントは行わない。サポーターが集まり、皆がやりたい行事だけを行っていく。
やりたい人が集まればやる。
集まらなかったら、やらない。
そういう選択肢を示した。
自発的な集まりが増えていけば、(PTAを)嫌々やる人はいなくなる。
自分たちのやりやすいように変えていいんだという、そういう空気をどんどん広げていきたい。
嶺町小学校PTAに参加した保護者の感想
思っていたPTAのイメージと違って楽しそう。
自分の意見を言って、それが成り立てば嬉しいし達成感がある。
一生懸命やれば感動する。ときには泣いたりとか・・大人になって、そんなことがあまりないのでそれが楽しい。
学校から地域へと広がっていく活動
これらの活動は、保護者ではなくても、その地域に住む専門家たちの好意で実現した、子どもたちのための活動。
その力をサポーター制で活かして、やりたいことを実現していく。
自分たちがやりたいものを、子どもたちを巻きこみながらやっていく。
近くにモデルになる大人がいること。
こういう大人になりたいとイメージできる存在があることは、子どもたちにとってもキャリア教育という点でメリットが多い。