地元の不動産会社が有料老人ホームを紹介するタチの悪い理由と手口。

私の地元には、大手私鉄沿線で幅を利かせている中堅の不動産会社があります。

この不動産会社、ポストに投函されるチラシやホームページや看板など、なにかと地元密着と謳っています。
(どこでも不動産会社は同じでしょうか?)

この不動産会社が2・3年前から有料老人ホームの紹介・斡旋をするようになったんです。

地元、商業スペースのイベント会場などで「有料老人ホーム入居相談会」を開催してそれなりに賑わっています。

なんで不動産会社が有料老人ホームの紹介をしてるの?

私は、疑問に思ったので、不動産会社に勤める友人に聞いてみると、不動産会社にとってもおいしいビジネスであることが分かりました。

なぜ地元の不動産会社が有料老人ホームを紹介・斡旋するのか、ちょっとタチの悪い手口と理由をお知らせします。

不動産会社にとって二度おいしい!有料老人ホームの紹介・斡旋

不動産会社は、住宅の売買や賃貸、入居の斡旋をするところ。でも最近は有料老人ホームの入居斡旋に精を出している不動産会社が多いようです。

その理由は、不動産会社にとって二度おいしいから

  • 高額の入居斡旋料(紹介料)報酬がホームから支払われる
  • 有料老人ホームに入るときに住居を仕入れられる
  • ホームから支払われる高額な入居斡旋料

    不動産会社が、不動産を仲介したときに受け取ることができる報酬は、取引金額の3%+6万円です。これは、宅地建物取引業法(通称、宅建業法)によって定められています。これに違反をすると、期間を定めた営業停止などの厳しい罰則がくだされます。

    ところが、これは不動産を取引した場合に限られていて、有料老人ホームの斡旋には「取引金額の3%+6万円」という報酬の縛りはありません。

    お金持ちの入居者(老人)に入って欲しい有料老人ホームとしては、優良な入居者を紹介してくれる団体にはけっこう高額な報酬が支払われるといいます。現状では、この報酬額に法律的な制限はなく、完全にグレーな状態。

    一人紹介すれば◯◯万円といった決まりはなく、不動産会社はサービスの良し悪しに関係なく、報酬額の多い有料老人ホームに、入居してもらえるように、悪い手口を駆使して斡旋します。

    有料老人ホームに入るときに住居を仕入れる不動産会社

    不動産会社にとって、有料老人ホームの斡旋・紹介がおいしい理由はもうひとつあります。

    それは、有料老人ホームに入るときに不要となる住宅の処分を任されること。
    不動産業界では仕入れ(しいれ)と呼んでいるといいます。

    有料老人ホームの入所には、多額の入所金が必要です。

    現金でポンと用意できる人ばかりではありません。
    子供が独立した後の一人住まいの住居を処分して入所する人も少なくないのが現状です。

    不動産会社にとって、本業である不動産の在庫を仕入れることができるのは、大きなメリット。
    古い家ほど立地が良い場合が多く、不動産としての価値が高くなります。

    先に触れたように、不動産業者の報酬形態は「取引金額の3%+6万円」。
    だから、安い家を仲介するよりも、高い家を仲介したほうが当然儲かる仕組みになっているのです。

    不動産会社が有料老人ホームを紹介する悪い手口とは?

    不動産会社は、日常的に物件の紹介を繰り返しています。

    物件を紹介して入居させることを仲介の業界では「客付け(きゃくづけ)」というそうです。
    なんだか入居者がモノみたいで失礼な言葉です。

    とびっきり優秀でなくても不動産仲介の営業なら、客付けのテクニックを心得ています。

    客付けの鉄板テクニックは、アテブツ → キメブツ(人によっては逆の順番)。

  • キメブツ・・お客様に決めて欲しい物件
  • アテブツ・・キメブツを引き立たせる物件
  • 家賃や駅からの距離など、条件が競合する物件を事前に選んでおいて紹介。
    2つの物件は、ギャップが激しいほどキメブツが引き立ち、効果が高いと言います。

    これもいいかも?的な中途半端な物件は、お客さんが迷うだけだから最初から紹介しないそうです。
    怖いですね!

    このテクニックが、有料老人ホームの紹介でも使われます。

    不動産会社は、キメブツとなる(斡旋報酬が高い)有料老人ホームには、事前に連絡をして準備してもらいます。
    ◯日◯時に◯人でホームを見学に行くと告げて、万全の体制で出迎えてもらいます。
    もう、ホームの職員総出でお出迎えするような状態で、これには見学する人もビックリするといいます。

    逆に、アテブツとなる引き立て役の有料老人ホームには、なんの連絡もなしに突然、見学に押しかける。

    当然お客さまの反応は「さっきのホームは職員総出で出迎えてくれたのに、このホームの対応ってどうなの?」になります。

    紹介する不動産会社の社員は「ホームによってかなり雰囲気が違いますね」なんて相づちをうっておきますが、心のなかでは“シメシメ”とほくそ笑んでいます。

    「有料老人ホームを紹介したお客様はコロッと引っかかる」というから不動産会社は怖いですね。

    老人ホームの入所が決まれば、ホームからは多額の紹介料がもらえて、そのうえ売却する戸建てやマンションまで仕入れられる。
    まさに、一人落とせば二度おいしい!不動産会社の悪い手口です。

    終の棲家は自分で決める

    不動産会社に紹介された有料老人ホームがたまたま良い所だったらラッキーです。
    ただ、終の棲家となる場所を他人に決めさせるのはどうなの?と疑問符がつきます。

    加えて、入った人が快適に過ごせるように尽くしているホームではなく、とにかく入ってもらうために高い報酬を払う有料老人ホームは、いかがなものかと思えてきます。

    不動産会社に紹介してもらうことは、損得勘定が絡むことから逃れません。
    親切そうな営業さんの、その紹介に市場原理があることを知っておく必要があります。

    今のところ、有料老人ホームを公正な立場で紹介してくれる資格はありません。
    多少面倒で、時間がかかったとしても、自分の目で確かめて決めるしか方法がないと思います。

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    先日の朝日新聞に「老人ホーム見学のチェックポイント」が掲載されています。

    有料老人ホームの設備・施設の充実も大切ですが、入居者の顔を見て満足度を計るのが良いと書かれています。
    日頃のスタッフとのコミュニケーションや、ホームの雰囲気というのは分かりものです。

    老人ホーム見学時のチェックポイント(食事編)

  • 食堂への誘導に無理がないか
  • 車いすの空気が正常圧か、汚れていないか
  • 食事は、車いすではなく通常の椅子で
  • 服薬介助の風景を確認
  • 食事介助は、入居者のペースで
  • 入居者の表情、ホームの臭いを確認
  • 食堂全体の配膳ペースをみる
  • 2015年4月10日「朝日新聞」より