誰でも自分だけは個性的な人間であると思いたい。
Smapも「ナンバーワンにならなくていい・・、」と歌っていた。「オンリーワンの自分」を生かせる場を見つけることができれば大成功できるのではないか、という幻想を抱きすぎてはいないだろうか。
オンリーワンの個性的な自分が成功するというのであれば、地球上の人間の数だけ成功がなければならない。そんなに莫大な供給を消費する需要が一体どこにあるのだろう。
成功に個性は必要ない。まずは普通であることが最も成功しやすいことをしっかり理解する必要がある。
成功するためには個性を捨てよ!
個性的であることはカッコイイこと、成功するためには、まずこの幻想を捨てることから始めなくてはならない。個性的であることは、時と場合によってはカッコイイこともあるが、大体において面倒くさい人であることが多い。
例えばこんな感じだ。
私は先日「本がたくさん入る本棚」という記事を書いたが、この記事のタイトルを見てクリックしてくれた人がいたとして、そこに書いてある内容が「本がたくさん入るダンボール」だったり「本はたくさん入らないけど見た目が個性的な本棚」のことが書かれていたら大抵の人はガッカリしてしまうだろう。
電卓で「128×256」の計算を求めようとした時に「そんなの自分で計算しろよ!」「こんな計算してなんの意味があるんだ!」なんて表示されたら、その電卓を叩き割ってしまうかもしれない。
機械と人間には求められるものが違うだろうと思われるかもしれない。また、珍妙な解答を面白がる余裕のある人も一部には、いるだろう。しかし、誰かの問題を解決することで多くのビジネスが成立している。多くの人は自分の困ったことをサッと片付けてくれる人に、気持よくお金を支払うのだ。
陳腐なオリジナリティーや個性的であることは、逆にカッコ悪いのでさっさとやめてしまおう。個性的であることの呪縛から解放されれば、成功の型に素直にハマることが出来る。
成功している型を探せ!
成功には型がある。それはその世界のパイオニアが築いた成功パターンといえるだろう。
とにかく、キレイに舗装された高速道路を走ることだ。
近道はウロウロと探しまわるものでもないし、自分で果敢に切り開いていくものでもない。あらかじめ誰かが整備してくれた道路を、猛スピードで走り抜ける。それに勝る近道はないのだ。
阿部寛が主演してテレビドラマにもなった漫画「ドラゴン桜」原作者の三田紀房が執筆したビジネス書「個性を捨てろ!型にはまれ!」に紹介されている内容だ。本書には具体的な事例が多く掲載されているので腑に落ちやすい。
売れる漫画には必ずケンカの要素が盛り込まれている。なにもこれは、殴り合うようなケンカだけではない。主人公と宿敵のライバル関係、親と子の対立、教師と生徒のいがみ合い・・・(中略)これらの対立やケンカがあってこそ、漫画に熱い血が宿るのだ。(中略)以上のような「対立」→「葛藤」→「和解」を踏まえた物語にすれば、まず失敗することはない。
これはある意味で王道であり、売れる漫画の「型」なのである。ただ、漫画家を志す人たちの中には「自分は個性的なんだ」という自負心が強いせいか、素直にこの王道を選べない人がいる。要するに、ベタなことはやりたくない、というのである。そして結局は「ああでもない、こうでもない」と考えあぐね、なかなか世にでることがないのだ。
バンドをやっていた人や音楽に興味のある人なら「コード進行」という言葉をご存知だろう。コード進行は、普通の人が心地よく感じる音楽の展開を体系化したものだ。コード進行のルールに則って曲を作り、アドリブをすれば、どんな人であっても、そこそこの演奏ができてしまう。まさに音楽界の王道とも言える型である。
絵画の世界には、2次元のなかに奥行きを感じさせる「遠近法」があるように、どの世界であっても王道といえる「型」が必ず存在する。自分の成功したい分野から、いちはやく成功する型を探そう。その型こそがキレイに舗装された高速道路に違いないのだ。
とことん型にハマれ!
成功の型(パターン)を探し当てたら、素直に型にハマってみるのが正しい成功の作法だ。そこにオリジナリティや個性はひとまず必要ない。必要ないどころか型を修得する時点においては個性は邪魔になることのほうが多いことを肝に銘じておかなければならない。
型は習得するのが難しいが、いったん型を身につけてしまえば、ずっと使うことの出来る最強のツールである。
僕は中高大と学生時代にずっと剣道をやっていたのだが、はっきり言ってこれほど不思議な競技もないだろう。
特に中学や高校のレベルでは、筋力や体力では絶対に負けないはずなのに、簡単に高段者のおじいちゃんに負けてしまうのだ。下手をするとはじき飛ばされてしまうこともあるから恐ろしい。
どうしてこんなことが起こるのかと言えば、もう剣道ならではの「型」のせいだとしか言いようがない。武道といわれるものはほとんどがそうだろうが、一度「型」を身につけたものは、圧倒的な強さを誇るのである。
気になるまとめ
脱ゆとり教育、詰め込み教育への回帰などと言われていますが、本書の著者も昔から日本に伝わってきた教育の型を重視しろと説いています。賛否はあるかもしれませんが、本書を読むとドラゴン桜の主人公、桜木健二に一喝されたように納得してしまうから不思議です。